■キリスト教とわが国の結婚観
キリスト教が渡来し、その結婚観、夫婦観が、わが国の習慣や感情に影響をあたえたことについては、当時の「耶蘇会士日本通信」での報告にも出ています。
一例しますと、河内国三箇城(八尾市)の城主サンチョ(大木殿)の姫モニカが、堺滞在中のイルマン(修士)に、心に染まない人に嫁がせられようとしていることを訴えると、イルマンはサンチョに、姫が同意しないのに親が結婚を強制することの罪悪を教えて、やあさせたというのです。
親の意のままに嫁がせられていた多くの武家女にとって、これがどんなに大きな福音だったかは、その後多くの武家の女性のキリシタン信者を出し、ガルシャ夫人などもその一人です。
ガルシャは明智光秀の女、細川忠興の妻となり、石田三成の挙兵に際し、夫の忠興が関東(徳川)方として出陣しているので、大阪(豊臣)方の迎えを拒絶したことで有名です。
■挙式に先立つ結婚の告示
キリスト教がプロテスタント(新教)、カトリック(旧教)に大別できることは常識で、教会や牧師によっても、式次第には若干の相違があります。
しかし、結婚を神の添わせたまう、新たな生命の創造される人生の出発点と、意義深く考える清神には変わりありません。
それにはまず、挙式に先立ち、結婚の告示を行ないます。
教会のおきてによりますと、当事者だけの了解では挙式はできません。
他人の正しい了解が必要で、前もって両人の結婚について故障がないかどうかを告示して確かめることになっており、婚約の発表なども、その一種とみることもできます。
すなわち、結婚の告示または婚約の発表によって、故障の申し出があった場合は、その結婚は延期されるか、断わられるがすることになるのです。
方法は、ことばどおりに告示ですが、今日では婚約発表をもって、これに代えることも多いようです。