特に1980年代、フェミニズムの台頭で「女性の時代」がはじまった日本社会で、なぜ子どもを産まないのかという少子化問題を前面に出しにくかった事情もあった。
しかし、どういう事情があろうがそこに先見性をもって警鐘するのがメディアの役割であり、その役割が充分ではなかったことはいなめない。
少子化対策が遅れたのは、少子化問題が"票"にならないから政治が積極的に動かなかったからである。
そうなると当然、官僚も動かない。
逆に高齢者対策は"票"につながるから与野党こぞって対応が早く、高齢者対策「新ゴールドプラン」にはあっという間に9兆円もの巨額な予算がついている。
はっきり言って、政府は生まれてくる子どもより老後を優先したのである。
ここにも「未来」に対しての無理解・無計画さが垣間見える。
ちなみにわが国の子ども関係の社会保障給付費の割合はわずか3%、先進国では10%である。
2002年5月21日、厚生労働相が少子化現象について「これでは国が潰れる」と進言し、首相がすぐに「新しい少子化対策」を指示したたった半月後の6月6日、政府は児童扶養手当の支給を制限する政令改正案を閣議決定している。